2025.11.04

「サスティナブルセレクションEXPO2025」出展レポート

サスティナブルセレクションEXPO2025出展レポート

去る10月2日より3日間にわたって東京都立産業貿易センター浜松町館にて開催された「第3回サステナブル★セレクションEXPO 2025 in東京」に、弊社三山株式会社は参加いたしました。

このイベントでは、「サステナブル★セレクション」に選定された製品・サービスが出展の中心となります。弊社のWACSがこの度、「サステナブル★セレクション」に選定されたことから、弊社も出展の運びとなりました。

※㈱オルタナのサスティナブルセレクション紹介ページにも掲載されていますhttps://alterna.co.jp/sustainable_selection/list/ss2025/25/

本レポートでは、イベントの内容と視察から得られた知見、選定されましたWACSについて、改めてご紹介させていただきます。

【開催概要】

・イベント名:第3回サステナブル★セレクションEXPO 2025 in東京

・開催日時:2025 年10 ⽉2 ⽇(⽊)~10 ⽉4 ⽇(⼟)

・開催会場:東京都⽴産業貿易センター浜松町館2F‒5F

・開催規模:18,783名(昨年実績)

・開催趣旨:「全国のサステナブルな製品/サービスを支援し、社会やマーケットでの存在感を更に高めること」

「サステナブル★セレクション」とは

「サステナブル★セレクション」とは、サステナブル(持続可能)な理念と手法で開発された製品・サービスを選定し推奨するプログラムです。3つ星までの三段階で評価され、1つ星(★)は「製品・サービスが、持続可能な社会づくりに貢献していること」、2つ星(★★)は「★に加え、取り扱う企業・組織がサステナブル経営に取り組んでいること」、3つ星(★★★)は「★★の中から特に大きな社会的インパクトを生み出していること」という基準で選定が行われます。2020年にスタートしたこのプログラムは、現在では合計224件を選定しています。(⼀つ星114 件/⼆つ星74 件/三つ星36 件)

弊社は今回、靴下工場で発生する繊維ゴミを再び糸にするプロジェクト「WACS(ワックス)」にて1つ星(★)に選定されました。

弊社も含め、セレクションに選定された製品・サービスを中心に、環境や社会に配慮された商品が多く集まり、生活者やビジネス関係者の方々が展示・販売・商談会を通じて交流をはかる場として、サステナブル★セレクションEXPOが開催されました。

サステナブルな未来への提言

今回の展示会開催に合わせて、この先10年間の未来に向けたビジョンとして「SHIFT Sustainability」という言葉が策定されました。

この「SHIFT」はそれぞれ下記のキーワードの頭文字から取られています。

Sustainability(持続可能性)

Humanity(⼈間性、⽣命の尊厳)

Innovation/Integrity(⾰新/誠実さ)

Future/Fairness(未来/公正)

Transcend(超越)

「サステナブルな世界に変えていこう」という単なる呼びかけで終わらせるのではなく、「我々がサステナブルな世界に変える、変えていく」という力強い意思表示を示したメッセージです。

近年、ファッション産業は環境負荷が非常に高い産業であると国際的に指摘を受けており、環境負荷を考慮したサステナブル(持続可能)なファッションへの取り組みは急務であるとされています。海外に工場を置くなどして衣類の多くを海外へ依存している日本においては、特にその環境負荷が見えにくいのが現状です。そんな昨今、環境省を中心にサステナブルファッションについての検討が日本でも盛んに取りざたされるようになりました。このような現状において、強い意思表示となるメッセージを掲げサステナブルファッションを推進していくことは、ファッション産業において必要不可欠なものだと感じました。

WACSと市場の動向

近年、サステナブルファッションをけん引するヨーロッパは、靴下市場においても世界市場をけん引し、最大のシェアを誇っています。靴下市場自身も年々拡大傾向にあり、今後も継続して成長が見込まれています。日本の靴下市場も拡大傾向にあり、大きな伸び幅が予測されています。快適さと機能性に重点を置く靴下が求められている一方で、靴下の製造工程での環境にやさしい持続可能な素材嗜好が高まっており、これが靴下市場の規模拡大の一因ともなっています。

弊社のWACSプロジェクトは、まさにその傾向に合致するものであり、サステナブルファッションと靴下市場の双方にて、プラスの働きができるものです。

「WACS(ワックス)」とは

この度のセレクションにて選定された「WACS(ワックス)」は、靴下工場の繊維ごみを買い取り、再び原料に戻すプロジェクトです。プロジェクトです。75周年を迎えた弊社と、長年培った靴下工場様とのパートナーシップにより、実現いたしました。

日本の靴下の約6割は奈良県で生産されており、その量は年間約6,500万足にのぼります。その生産工程では、編みくずや端材などといった繊維ごみが発生してしまいます。この繊維ごみの量は靴下生産量の約5%前後といわれ、奈良県内だけでも年間180トン以上が廃棄処分されていると推計されています。その廃棄費用は、1,600万円にも上ります。我々はこのロスや廃棄に着目しました。

それが、WACSプロジェクトです。「Waste(廃棄物)」を、「Cut/Crush(裁断/粉砕)」して綿に戻し「Spinning(紡績)」して新たな糸を作る、というそれぞれの工程の頭文字を取り、WACSと命名いたしました。

まず、我々は廃棄される繊維ごみをメーカー様より有償で回収(買取)いたします。買い取った繊維端材を色別に分けストックし、それを工場で細かく裁断し、専用の機械で反毛を行い、バージン綿と併せて再生糸を製造します。この再生糸は再び繊維原料として生産工場へ出荷され、靴下メーカーへと供給されます。

ポイントとなるのは、繊維ごみを色ごとに分別している、という点です。これにより、再生糸の再染色が不要となり、染色工程に伴う水資源やCO₂排出を削減できます。さらに、焼却処分時のCO₂排出削減により、さらなる環境負荷を低減に尽力しています。このプロジェクトで製造する再生糸は10色展開となっており、幅広い製品づくりに対応しております。既に弊社では、8,537kgもの繊維ごみの再利用を実現しました。

WACSと地域産業

展示会期中には懇親会も開催されました。そのなかで、2024年の元日に発生した能登半島地震の話もうかがう機会がありました。地震発生直後とほとんど変わらない状態のままで放置されている家屋がまだ多くあり、その現状を知って欲しい、という言葉が強く印象に残っています。このような展示会に参加したからこそ得られた繋がり、そして聞くことができたお話だったと感じています。

WACS自体は復興支援に直接つながるわけではありませんが、産地活性化を促すプロジェクトという側面を持ち合わせています。日本の靴下生産量全国第一位の奈良県に根差したプロジェクトとして開始しており、靴下の産地としての奈良にスポットが当てられることも、目的の一つだからです。産地の魅力を伝えることで地域産業を盛り立て、ひいては日本製靴下の価値と魅力が広まっていくことを、弊社では強く願っています。

最後に

今回は、展示会や懇親会への参加でしか得られない数多くの知見を得られる貴重な機会となりました。そのことに気づけたのが、大きな収穫だったと感じています。今後も機会があれば、積極的にこのような展示会に参加していきたいと考えております。弊社の繊維や取り組みをアピールするだけではなく、それらを利用した製品としてアピールしていくことも検討しておりますので、今後も弊社の動きに注目していただけますと幸いです。